大判例

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東京地方裁判所 昭和43年(借チ)10号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔決定理由〕二、……本件土地附近は、申立人が相手方との間で、別紙目録(二)記載の借地契約を締結した昭和三六年五月二四日以前に、すでに都市計画上の施設として、防火地域の指定がなされており、しかも、本件土地の面する幅員一一米の道路に沿つて、各種商社の店舗が建ち並んでいたことが認められるので、右借地契約締結当時すでに堅固な建物を建てるのが適当な状況であつたものと推認されるが、その後も、附近には高層ビルが建てられて、土地の高度利用が進められ、商業地として発展しつつあり、右借地契約当時からさらに事情が変更しているものと認められる。そして、当事者も、前記借地契約締結に当つては、土地の利用状況がさらに変更するのを待つて借地条件を変更することを予定していたことが認められる。そこで、右のような事情を考えると、本件土地は、附近の土地の利用状況の変更により、現在借地権を設定するとすれば堅固の建物の所有を目的とすることを相当とするに至つたものと認めるのが相当であり、申立人の本件申立は認容されるべきである。

三、そこで、本件申立を認容するについて、附随処分の要否、内容について検討する。

(1) まず、借地契約の存続期間について、別紙目録(二)記載の借地契約では、三〇年と定められ、なお二二年余の残存期間があることになるが、本裁判によつて堅固の建物の所有を目的とするものに変更した場合の存続期間については種々の見解があるので、この点の紛争を避けるため、右借地契約の存続期間を、この裁判の確定した日の属する月の翌月から三〇年間とする。

(2) 次に、財産上の給付について、鑑定委員会は、この裁判による借地条件の変更に伴つて、申立人側は建物の高度利用による収益の増加、相手方側は建物買取請求権行使に伴う負担額の増加底地取引価格の低下等が予想されるので、双方の利害の調整のため、財産上の給付をさせるのを相当とし、その金額は、更地価格を金二、三七〇万円(3.3平方米当り約九〇万円)と評価し、堅固の建物所有を目的とする借地権割合九〇パーセントと堅固でない建物所有を目的とする借地権割合八〇パーセントの差に相当する額が相手方の受ける不利益であるとして、金額は二三七万円となるが、この裁判により期間を延長しないことを前提としてこれから二〇万円を減じた金二一七万円を相当とするとしている。

当裁判所も、右の財産上の給付をさせるべき理由として鑑定委員会の掲げる事情は正当であると考えるが、さらにこれを敷延すれば、本件のような賃貸借が期間満了によつて終了して建物の買取請求権が行使されることは殆んどないものと予測され、一般には、そのような事態の前に、借地人としては、建物と借地権を第三者に譲渡せんとして賃貸人の承諾を求め、賃貸人としては、これを承諾するか又は建物及び借地権を自ら譲り受けるかの選択にせまられ、後者を選んだ場合には、堅固の建物所有を目的とする借地権の価額を対価として支払わなければならなくなることを考えると、本裁判において借地条件を堅固の建物所有を目的とするものに変更する場合は、堅固の建物所有を目的とする借地権価額と堅固でない建物所有を目的とする借地権価格との差額を賃貸人である相手方に給付させるべきである。

そこで、賃借権の存続期間を延長すること、その他前記の本件賃貸借の成立及びその後の事情を斟酌しその給付額については、鑑定委員会の意見のとおり、更地価格を金二三七〇万円とし、堅固の建物所有の目的の借地権価格を更地価格の九〇パーセント、堅固でない建物所有の目的の借地価格を更地価格の八〇パーセントとするのを相当と認め、この両者の差額金二三七万円を申立人は相手方に対し支払うべきものとする。なお、申立人は、前記のとおり、賃借権の譲渡の承諾料として金二六〇万円を相手方に支払つておりそのときの事情からすると、この裁判における財産上の給付額は相当減額されるべきであると述べるが、なるほど、右の金額は当時の賃借権譲渡の承諾料として高額であつたといえるが、右の金額が、申立人の主張するように、将来借地条件を変更する場合の承諾料を減額するという前提で決定されたかどうかについてはこれを確定することはできない。そして、本件土地上の現存建物は、申立人自身も認めるように、非常に老朽化しており、朽廃に近い状態にあるので、数年にして借地権が消滅する危険性が強く、この事情を考えると、前記の給付額は高額であるとはいえない。(福嶋登)

(一) 土地

東京都中央区日本橋大伝馬町

宅地 123.43平方米(37.34坪)の内87.07平方米(26.34坪)

(二) 借地契約

種別 右土地について堅固でない建物の所有を目的とする賃貸借契約

成立 昭和三六年五月二四日

期間 三〇年間

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